怖い錬金術 誰でもこういうもの?
2006/03/01
●数字だけの世界
ライブドアの一件で思うのは、数字を動かすだけで利益が出せる世界は怖いな、ということである。一度手を染めたら、そこから抜け出すのは難しい。結局は、実態がないから、次から次へと粉飾を重ねることになる。
それにしても、テレビで嬉しそうに騒いでいたホリエモン、内心、冷や冷やで夜も眠れないということはなかったのだろうか。私にはそういう心中が分からない。もし平気だったとすれば、何かが麻痺していたとしか言いようがない。
●論議を広く、深く、
女系天皇とは何かが世間にも知られるようになって、ここは慎重にやったほうがいい、という意見が多くなってきた気配である。
たしかに過去女性天皇は8人いたが、あくまでピンチヒッターで、次は男系の天皇を立てているらしい。継体天皇のように宮家でもないところから探し出して、男系を守ろうとしてきた経緯があって、それをないがしろにできない、という意見はある意味、正当である。
しかし、この平成の御代に、天皇制を続ける論議しかない、というのもいかがなものか。 哲学者の関曠野氏は、首相の諮問機関が皇室典範改正を論議するなら、「天皇制と共和制を比較検討し、そのメリットやリスクを論じるという手順がとられていないのはおかしい」と述べている。せっかくの機会である。様々な角度から深い論議をし、その結果を国民は重く受け止める、というのも一つの考え方かもしれない。
●やはり教育を
国会で格差社会をめぐって議論がなされたが、そう活発な様子ではなかった。格差が目立つのは高齢化社会に入ったからだとする意見が正統的だが、いくつかの指標が別の意味で日本が格差社会に入ったのではないかとの危惧を抱かせる。
つまりOECDによると、その国の平均的な世帯所得の半分以下しかない世帯の人口比率は日本15.3%で、OECD諸国平均10.2%を大きく上回り、加盟国で日本より比率が高い国はメキシコ、トルコ、アイルランド、そして米国しかない。10年ほど前と比較すると2倍前後も増えているらしい。
あるいは、5世帯に1世帯が貯蓄50万円未満で、「無貯蓄」に近い状態だという。 京大教授橘木俊詔氏は、その原因として①不況、②非正規社員の増加、③高齢者間の貧富の拡大、④母子家庭の増加、を挙げている。
格差社会があるのは当然である。総中流などと言っていたのがおかしいのである。問題は、格差が固定化する社会である。階層間の流動性をどう担保するか。
かつては教育の機会均等がそれを保障したわけで、これからもそれが最終回答のような気がする。
●関西和事にひと言
中村雁治郎が大名跡「坂田籐十郎」を襲名し、伽羅先代萩を演じて、好評を博した。おおむね新聞評も良く、めでたしめでたしだが、私はどうも関西の和事のテンポがまだるっこしくて、付いていけなかった。離れた座席から大いびきが聞こえてきたのには、驚いた。伝統を蘇らせることの難しさを思ったものである。
雁治郎、かつての扇雀はお初のような女郎をやらせたら絶品の人で、武家ものの政岡を演じたところにも無理があったかもしれない。
名前が大きいと何かと気苦労なことだが、時間をかけてその名を高めていくしか手はない。
●冷蔵庫恐怖症
先号で夫の仕事を数学者と書いたが、本人から「違う」とクレームが来た。コンピュータ・サイエンスが専門だそうだ。
よく夫の仕事の中身も知らないで結婚したものだ、と言うので「じゃあなたは私のしていることが分かっているの?」と反論したところ、押し黙ってしまった。
彼は実に健啖家で、私はいま冷蔵庫恐怖症にかかっている。というのは、常に食料の補給をしておかないと、またたくまに底をつくのである。
コンピュータ・サイエンストというのは、誰でもこういうものなのだろうか。
