いつまでも若いつもり ニコール・キッドマンの時代
2004/07/01
●同窓会で自分の歳を確認する
司馬遼太郎さんが70歳を前に台湾に行って老人扱いされたのが心外だと書いているそうだが(関川夏央『司馬遼太郎という「かたち」』)、何歳になっても本人にはまだ若いという気持ちがあるようである。
同窓会に出ると、私は自分の実年齢を教えられたようなショックを受ける。自分では若い気でいるから、友の老け具合に我が身を見て愕然とする。
先日、知り合いが初めての同窓会に出て、意外な話を聞き込んできた。同じクラスの女性が、「男性は誰も在学時より素敵に見える」と宣ったそうである。私が「よほど普段見ている旦那が貧相なんじゃないの」と答えると、大笑いをしていた。
アメリカでは同窓会が恋の芽生えに効く、と人気だそうである(アントラム栢木『住んでみてわかるアメリカ常識集』)。そう知らない仲ではないから、恋のスタートがスムーズということがあるのかも知れない。
先の朝日新聞調査で、定年後、夫は妻との旅行を考えているが、妻は友達との気のおけない旅行を考えていることが分かった。夫婦って何なのか、老いの期間が長くなるほどに、その問いが鋭さを増している。
●ゆったりした美術館を
一年ぶりにパリに行った。昨年はカンヌ映画祭の帰りに寄ったが、今年は仕事絡みである。
シーズンオフということもあって、オルセー美術館はいつもより静かで、ゆったり絵を見ることができた。
それに比べて、日本の美術館の混み具合のひどさよ!人気の企画ものになると、人の頭と背中だけをみるような騒ぎになる。これを解消する手だてはあるのだろうか。
一つの方法は、美術館をリフォームして、企画物の部屋を常設などよりスペースをゆったり取ることである。
六本木に新国立美術館の話があるが、展示室のスペース拡充はもちろんレストラン、カフェなどお洒落な空間も必要である。お役所感覚に引きずられないことを求む。
●祖母の教訓
知り合いの話だが、やんちゃな暴れん坊の息子がニューヨークに住んで、月に1500ドルを稼ぐようになったので、部屋代に600ドルを使っても暮らしていけるから、もう送金しなくていい、と言ってきたと笑顔で話してくれた。
彼はおばあちゃんから何度も「ただほど高いものはない」と教えられてきた。それが役にたったのが、マフィアのスカウトに危なく引っかかりそうになった時だという。彼らは奢り放題で若者を集め、そこで喧嘩をさせて強い者をスカウトするのだという。彼は勝ち残った1人で、意気揚々とした時におばあちゃんの声が聞こえたそうである。
これは高尚な話ではない。しかし真実の話である。
●白いカラス
映画を立て続けに見ている。コールド・マウンテン、白いカラス、死に花、ロスト・イン・トランスレーション、シルミド、この間に海老蔵のお披露目の興行にも出かけている。
映画はどれも印象深いものばかりで、中であえて1つを挙げれば「白いカラス」である。大学教授役のアンソニー・ホプキンスが40歳離れた大学の掃除婦ニコール・キッドマンと恋に落ちる話で、内面と外面を違えて生きざるをえなかった人間(これは普遍性のあるテーマだ)の最後の魂の燃焼を描いている。CG全盛の時代に、こういう写実だけの映像は気持ちが落ち着く。
今年はニコール・キッドマンの年である。話題作「ドッグヴィル」は見逃したが、「コールド・マウンテン」ではお嬢様から大地を踏みしめて生きる女への変身を見事に演じた。メグ・ライアン「イン・ザ・カット」ではプロデュースに回っていた。
妙にひょろっとした知的な女優で、冷たい雰囲気もあって、このタイプははたしてアメリカ人の好みだったろうか。ほかにちょっと思いつかないのだが。
