マネジメントなき国 委員会の値打ちが上がる
2001/09/01
●反グローバリズム
ジェノバ・サミットで20万人もの人間が経済のグローバリゼーションの進行に異議を唱えたのは、衝撃的だった。警察の発砲で死者が出た。そのあとも、IMFと世銀は混乱を恐れて、会議日程の短縮を決めた。首脳のなかには、断固取り締まるべきだという意見と、市民の意思表示として重く捉えるべきだという意見があったという。ひるがえって日本の現状を考える。「痛みを強いる改革」とは、とりもなおさずこのグローバル化に乗るということであろう。しかし、どこかでデモがあったとは聞かない。かえって小泉人気は高い。何の覚悟もなしに改革に突き進むことほど、恐いことはない。実際に痛みを知ったときに、理性的に対処できないからだ。ジェノバのデモは、他人事ではなく思う。
●官僚の手口
田中外相の「伏魔殿」発言は、なんと旧時代なと思ったが、政府の委員会に出ていて、腑に落ちる部分があった。露骨にある分野の担当から私を外そうと画策する官僚たち。彼らにすれば私が目の上のたんこぶなのである。委員の一人にその不正を訴えると、「あなたが騒げば、委員会の値打ちも出る」と励まされた(?)。よほど足を踏ん張り、きりりと唇を結んでいないと、伏魔殿はあの手この手で籠絡しようとする。私は田中外相の手腕を全面的に認めるものではないが、対守旧派官僚に関しては、挫けずやれるところまでやってほしい、と切に思うのだ。
●熱しやすく冷めやすい
日本はマネジメントなき国だと言われる。世界をリードする技術があっても、それを世界のフィールドに乗せる人間がいないとも言う。集団の横並びで一気呵成に行くことは得意だが、それぞれ持ち場持ち場で戦略を持ちながら行くのは不得意である。この夏も敗戦特集番組をいくつかやっていたが、日本文学研究家のドナルド・キーン氏が捕虜だった日本人を訪ねる番組があった。なかに戦後の日本をずっとジャーナリストとして見つめてきた米国人が登場し、「日本人には歯止めがきかない面があり、それは今なお直っていない」といった趣旨のことを発言していた。この熱しやすく冷めやすい国民性はどこから来たものか。少なくとも様々なレベルでマネジメントに意を用いるようになれば、そう暴走することもなくなるだろうにと思う。
●ガサ入れの鉄
長く労務畑を歩いてきた人にある人物を引き合わせたことがあった。思わぬ反応に驚いた。「目つきの悪さが気になりますね」と言う。私はその人を紳士的に見えると思っていた。テレビ番組で″ガサ入れの鉄″という名の元刑事が出てくるのがあった。ある家族がテレビ局の100万円を自分のマンションのどこかに隠し、制限時間内で見つからなければ自分のものにできるという趣向である。最初は2、3人のタレントで探し、最後の10分というところで鉄を呼ぶ。不思議なことに、鉄はやすやすとお金の在り場所を探り当ててしまう。彼が追いかけるのは家族の目線である。「この部屋、あまり使ってないんでしょ」などと質問を投げかける。相手は、隠し場所にはあえて目線をもっていこうとしない。そこを読み取っているらしいのだ。
私はその元労務担当者に鉄の風貌を重ね合わせた。
