ほんとにもう! コップのなかの争い
2000/09/01
●建築家の言い訳
家の門に木を使っている。それが排気ガスなどで汚れてくるので、家を設計してくれた友人に、塗装してきれいにしてくれるよう頼んだ。しかし、友人は悠然と答えるだけである。「木は経年数の美しさがあって、お寺は300年、400年かかってあの重厚な感じが出てくるんだよ」 私はそんなに生きられる自信はないし、お賽銭が欲しいわけでもない。せいぜい30年、快適に暮らせればいいんだ、と言っても馬耳東風である。建築家という生き物は、ほんとにもう!である。
●2匹の恐竜
経団連と日経連の合併だそうだ。私は前からどっちも要らない派なので、それがくっつくかもしれないと聞いて、頭のなかに大きな?が宙吊りになったままだ。 一度どちらも解体して、時代が求めるのならば、また新たな組織を誕生させればいい。経済人は変化とスピードがモットーなのだから。
●性的ボルテージの統御
渡辺淳一さんの説だが、男の15歳、16歳頃は性的ボルテージが上がる頃だから、机の前に座っているだけでは、そのエネルギーを統御できない。身体を使って発散させるのがいい、とおっしゃる。昔なら丁稚奉公だとか、いろいろと身体をいじめる機会が用意されていたが、今はそれが欠けている、と。私も基本的に賛成である。ただ、学校に行かず家に引きこもったり、ワル仲間でつるんで遊び呆ける子たちを、どうやって動機づけるかである。学校という制度の枠外に出たとき、少年を捕捉することはとても難しい。一連の事件の子たちは、社会のつながりから脱落している印象を受ける。
●異邦人の末裔
いまの子たちは生きているリアリティが足りないなと思う。「人間を殺すとどうなるか見たかった」とうそぶく少年が後を絶たない。まさに少年Aの言う″透明な存在″があちこちにいる。かつて話題になった小説に、カミュの『異邦人』がある。映画にもなったので、ご記憶の人が多いと思う。その主人公ムルソオは、母親のお葬式の後にピストルで殺人を犯す。殺人の動機を「太陽のせいだった」と答える。あの主人公に少年Aたちの行状を教えたら、いったいどんな感慨を洩らすだろう。俺の同類よと叫ぶか、それとも目を被いさめざめと泣くか。はたしてどっちだろう。
●女性はお飾り
いま自民党と連立を組む政党は?と聞かれて保守党の名が出る人は、相当の政治通である(これは皮肉ではない)。では、その党首は?と聞かれて即答できる人は、ほとんど政治マニアである。答は扇千景、現建設大臣である。保守党はすぐに自民党に吸収合併されるのだろう、扇党首は閉店セールを任された1日店長みたいなものだろうと思っていたら、選挙後も留任している。自民党も魅力のない政党になったものだと嘆くのも馬鹿々しい。戦後50年経っても、女はお飾りなのかと嘆くのもわびしい(こんな気の抜けた話を書いている私も困ったものだ)。
●コップの中の争い
中流がアッパーとロワーに分かれると言われている。今までの中流に実体がなかったのだから、当然といえば当然の話である。大会社では同期の部長でおおよそ1千万円ぐらいの差が出始めている。その件で、勝ち組の部長さんが、負け組を指して「哀れだ」と評した。私は「それはコップのなかの争いである」と言った。日本に株式会社は100万社ある。つまり社長も100万人いて、収入はピンからキリで、何十億するような家をぽんと建ててしまう人から、日々の借金苦に喘ぐ人までいる。私は上を向いたら切りがないし、下を向いても気落ちするだけだから、我が道を行くことにしている。勝ち組派が自慢したい気持ちも分からないでもないが、やはりコップのなかの争いである。
